高校生編です。
1 それから 夏目漱石
やはり夏目漱石は高校生に欠かせないとして、「こころ」は日本中の高校生が教科書で多分一部は読んだと思うのです。それで、あえてここでは「それから」をあげておきます。夏目漱石はとても不器用に、一途に、一生をかけて個人の生き方と倫理のせめぎ合いを描きました。それがとてもよく現れている作品であり、また、日本で最も美しい恋愛小説でもあります。文字を通して生き方のヒントを得られる小説でもあり、また、文章を通して、頭の中にとても美しい映像が描かれる作品でもあります。高度な次元で不思議なほどバランスのとれた小説だと思います。
2 「金閣寺」 三島由紀夫
私が青春時代にすり切れるほど読み返した小説です。文庫本がぼろぼろになり、買い直してまたぼろぼろになりました。芸術とは何か、美しいとはどういうことか、はたまた青春時代とはどういう時代なのかを感傷的になるのを避けながら、でも本当に感動的に描いた作品です。分からないことが多くあり、そのわからなさが気になって仕方がなくてまた読む。今度は別の部分が気になる、ということのくり返しです。芸術とは、多分外の世界への広がりを感じさせるものであり、美しいということは、欲して得られない、その距離を保つべきもの。それをなんとか乗り越えようとする行いが青春時代の徒労のような情熱と重なるのです。
3 ある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて 村上春樹
村上春樹も全部好きなのですが、この本は短くて読みやすくて、ついでにアニメ映画「君の名は」のヒントになったと言われてます。ホントかどうか分かりませんが。日常に何気なく繰り返されるような平凡な毎日も、よく見つめていれば素敵な出会いが待っていると胸がときめきます。気持ちのよい風が一瞬通り過ぎるような、そんな小説です。あるいは古き良き時代や自分の素敵な思い出を重ねる人もいるかもしれません。素敵な思い出はなくても素敵な気分を思い出すことはできます。高校生ならきっと未来に胸をときめかすのでしょう。
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